17 ライフジャケット集団 | |||
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川の水量は、季節によって大きく異なります。 水の多い時は、大して川に向かって下りなくても 直ぐ舟に乗れます。 この時は、老坑は水の底で入れません。 水の少ない、乾期、通常12〜2月だと、川の底近くまで降りて舟に乗ります。 この時期、老坑は、底の底まで水が有りません。 採掘の最盛期です。 船は大きいのもありますが、老坑に入れるのが、7〜10人ぐらいで限度ですので、小舟で川を渡ります。 この入坑可能人数につきましては、物理的な限界ではありません。 実際に原石を採掘している仕事場を訪れる者は、 「急いでいる時、ものを尋ねるのには、忙しそうにしている人に聞くのが手っ取り早い」 の落語のオチを地でいくのに等しい存在なのですから、 せいぜい遠慮して、つつしみを持って入坑します。 職人さん達の一人にでも、仕事に邪魔だと思われてしまったら次の見学などとうてい許してくれませんので、遠慮、つつしみが第一になります。 私がご案内する老坑調査旅行としてはそれ以上の人数が入るのを自戒していますということです。 少し前までの日本人団体旅行によく見られた個人個人で行動しているときはおとなしいのに、団体になると、 どうしてああなってしまうのかと、諸外国から不思議がられた傍若無人な振る舞いをするなどもってのほか あくまでも、先方の好意があって初めて調査が出来ることを自覚して下さる方と、 心から端渓が好きで、端渓の本当の姿を知りたいという方だけをこの老坑にご案内しています。 さて、舟は、とうとうとした西江の流れの中を、巧みな操船で、10分前後で渡ります。 西江は、南方中国の水の幹線でもありますから、外航船も次々と航行していきます。 渇水期でさえ、日本の川と比べるとまさしく大河なのです。 釣り船も、小型の輸送船も、海賊船も、いろいろな船が、まあそれも、もう沈むのではないかと、心配になるような老朽船まで混じって行き交います。 その隙間を縫って、ほとんど揺れもせず、焼き玉エンジンのポンポン音をひびかせながら、ライフジャケットを着けた美男美女集団が渡ります。 |
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ライフジャケット集団 |
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未だかつて、船の事故が起こったことは無いのですが、船が小さいので、万が一を考えて、私がご案内する時は皆さまにライフジャケットを着用していただいています。 各自自前です。 老坑坑奥まで入るのに、靴の汚れが気になる紳士淑女の皆さま、長靴は持参しなくても現地で安く買えますが、ライフジャケットは今のところ、中国現地で直ぐ買える状況ではありませんので 日本から準備していって下さることをお勧めします。(2000年5月までに日本から持参し寄付しておいたライフジャケットが、40枚位はたまっています。今しばらくは日本から持って行かなくても済みそうです。 現地工場が換金してしまって実際に残してきた総数の半分も残っていませんが、又換金してしまうまではO.K.です。) |
対岸の峡南には、小村落への船着き場もあり、その船着き場の東側50メートル強の所に老坑への船着き場があります。 | |
峡南側(老坑側)の船着き場 |
舟着き場から老坑入り口に向かって、緩やかに上る、自然の川辺を利用して作られた傾斜道です。 水の多い時は傾斜道の上部部分に、水の量が少ないときは下の部分に着きます。 水量が多くても少なくても、舟の接岸は楽に出来るように工夫されています。 船の着く所の直ぐ東に検査に合格できなかった老坑原石が廃棄されています。 西江の水量が多いときは水に沈み見えません。 |
舟を下りると、ほんの少し坂を上ります。 水の多い時で10メートル強、老坑採掘可能時で約25メートル、特に水の少ないときは35メートルほどの距離です。 |
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そこに「老坑、坑仔岩硯石工区」の看板が上がっています。 看板の右側は坂道を挟んで崖、下は西江です。 看板の足が建っているところは斧柯山が小径を挟んで西江に接するところ、斧柯山の最下層です。 この看板をバックに記念撮影が始まります。 観光客は一人もいませんが、 有名観光地の 「ここで写真を撮れば、記念にピタリですよ拠点」になっています 。 |
船着場からの小道を辿るとこの看板 |
看板の真後ろに大きな鉄扉があります。 通常、許可無くして中へ入れません。 ところが、ここは中国、 老坑へ行くのにはとてもうるさいのに、 麻子坑や坑仔巌へ行く時は、この鉄扉は自由に入ってよいのです。 不可解と言っておいた方が理解できた気分になれます。 |
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小道の右(西)側の草むらの中を 小川が流れる |
坑仔巌などを訪れる日本の硯屋さん達は、 老坑入坑の許可が与えられず、 横目で閉ざされた坑口をにらみながら、 老坑の前を素通りされているのが現状です。 |
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