24 現地からの偽老坑に対する切実な手紙 硯の頁トップ みなせH.P.トップ
工場からの手紙 手紙訳文
老坑採掘工が書いた端渓諸坑図

 1998年後半に、日本の某業者が老坑の採掘権を含む(全)権利を買い取ることに成功したとのデマが流れ、半信半疑ながらも 「本当かもしれない」と考え、「老坑の権利は買い取れない」ことを疑い出す方達がでていました。
 その方達の中から、この噂の信憑性を確かめて欲しいとのご要望がありました。
 老坑の環境は前述通りですので、こういうことはあり得ないことなのです。
 百パーセントの確率でデマとは判っているのですが念のため、そして皆さまにご安心いただくために、1998年12月には肇慶の現地で、更に1999年1月には電話とFAXで、肇慶在住の老坑の複数の関係者から確認をとりました。
 「似た話しを繰り返す人たちがいるものですね、何度も繰り返している内にそれを信じる人がでてくるのを待って、一仕事しようとしているのでしょう。
 老坑の権利関係は何も変わっていません。
 何度も言いましたが、老坑の(全)権利をどんな形であれ買い取るなどということは不可能だと思って下さい」とのことです。

 老坑に関する限り、この手の話しは全部嘘なのです。
 短期間に暴利を目論む誰かが流すのです。
 信じてしまう人は彼らの餌食なのです。
 思うつぼにはまってしまったのです。

2011/5 捕捉
 画像や写真から端渓の本質(石密度の粗密)を視ることは不可能なのですが、長年にわたる取引がもたらす信頼を基に硯廠を信じ、硯廠からの「画像」を信じ2003年頃から現物検品をせず契約、間違いのない「老坑、坑仔巌坑」の佳品が着いていました。
 今年2月はじめ、これらの新たな契約のため画像送信を依頼しました。
 着信した画像に以前のような鮮明さがなく、且つ画像のアートNO.と製品一覧表のアートNO.の関係がハッキリと掴めませんので久しぶりに2011年4月20日過ぎ、老坑精品の現品確認 & 端渓各坑規格品補充契約のため肇慶を訪れました。
 今までは画像処理の専門家、製品表等制作の専門家に処置を依頼していたが今回は硯廠責任者が自分で全てを行った、とのこと。次回からは又専門家に依頼する、と苦笑いしていました。
 硯廠は基本的に石質の佳いものを契約するみなせの好みをよく掴んでいて「老坑精品として文句のない品質の原石(一部は作硯も済まされていました)」が揃っていました。
検品・契約の後「伝統の端渓採掘の渓から景勝地」と化した端渓渓谷、谷の名前も「景区 硯坑紫雲谷」と変更された老坑採掘の現場を訪れました。⇒現状はこちら

この時硯廠責任者は以下を述べました。
 ≪老坑の“採掘”権はお金さえ出せば一定の条件はあるが買うことができる。権利金は500万元(約6000万日本円=1998年時点外為換算)。しかしその有効期間は1年間だけなので誰も手を出さない。昔から掘ってきた鉱脈は健在でまだまだ続いているが、その鉱脈を掘り進めばもうすぐ西江の真下に入る。そこまで掘り進むのに大して時間は掛からないだろう。西江の下まで達したら坑道は雨季も乾季もなく常に水の底になり現実的な採掘は不可能になるので新しく鉱脈を探さねばならないことになる。
歴史上採掘されてきた今の老坑鉱脈以外の鉱脈を探すことは(老坑・坑仔巌坑・・・分析表)ボーリングにより比較的簡単だと思えるが、採算のためには石質の安定度まで確かめねばならないし、導坑からの試掘期間も必要だ。そのテスト期間を含めると「有効期間が1年間」では余りにも短すぎ利益を得られるとは考えがたいので、誰も手を出さない。≫

 現地の経済発展の進度が如何にすごいものかは「老坑採掘の権利に手を出さない理由」からも理解出来ます。
僅か数年前、当時も確か500万元程度の権利金を払えば老坑の“採掘権”は買い取れる、と言っていました。
しかし当時の中国人民の経済感覚ではこの500万元は現実問題として途方もない、考えもできない金額であり「老坑の権利は、それが期間限定の採掘権と言う限定されたものであっても買い取るなどということは不可能」との説明に繋がっていました。
それが2011年では「採掘権」だけなら「買える」が「採掘権の有効期間」の問題で「採算が合わないから手を出さない。」です。

 真摯に老坑原石を硯に仕上げている工場から届いた、ニセ老坑硯と老坑ニセ情報源に対する切実な憤りを書きつづった手紙、それを原文のまま(工場名・個人名は伏せ字)以下にご案内します。
 関于老坑的不良品(偽物)
現在有些无良厂商(山口先生已知道了、我在广州已告知)、或×氏×××厂等、他們字冒老坑的手法是。
@用坑仔岩字老坑岩、在坑仔岩的石料上人工制造金銀線来字老坑的金銀線、做到以假乱真。
A在質地不好的石料上、人造金銀線。 以上只有仔細辨別能分清楚。因為天然的金銀線是没有規則的、反之、人工造是有規則的。
B他們在日本的報刊上或通訊上大肆吹喧、老坑硯是其独有的、其他工厂是没有的、即使有也是假的、造成人為的混乱。

 可以大胆一句、到目前為止、没有人能断老坑。(包括政府在内)、除非他有雄厚的実力、不計成本、把老坑石料碎粒、都断、否則絶不可能。但到現在為止、没此人、将来、永遠都不可能会有。
 値得慶幸的是、本厂制作的老坑硯全部真材実料、絶无滲假、決没有欺瞞商人之意。 但数量不多、没能力購買更多更好的老坑石料。
 以上三点、供参考、謝謝!                中国広東省肇慶市 李 潤郷
 以下訳文
 老坑の不良品(⇒不良:質が劣るという言う不良ではなく“偽物”)について
山口さんには、広州でお知らせしたので既にその名をご存じですが、現在、いくつかの不良工場と斡旋業者があり、また、×氏や×××工場等もニセ老坑を模造しています。 注(×印は原文では実名です)
@坑仔巌を老坑と見せかけるために、坑仔巌に金や銀の線を加工して老坑の様にし、それを本物としています。
A品質の劣る老坑原石(注:老坑現場の検査に合格せず廃棄された原石を盗んで、一級の老坑として取り扱う輩が多く存在すると前述しましたが、これもそういう結果のひとつなのです)に金線銀線の加工を施している。天然の金銀線は自然な感じで規則性はありませんが、人造の線にはどうしても規則的な面が残りますので、こういう事は仔細に観察すれば判ることです。
B彼ら贋作者は、日本の新聞・雑誌などに、彼らだけが老坑を占有したので、他の工場は老坑を取り扱えないとか、取り扱っていてもそれは偽物であるとかの宣伝をし、混乱を もたらしている。

 ハッキリ言いますと、歴史上、老坑は(政府組織を含めて)誰にも独占されたことはあ りません。
 今までに出現しなかった強大な権力を持ち、且つ、利益を無視した上、老坑の石粒一粒 まで残さず独占を望む者が現れない限り、老坑を占有することは絶対不可能なのです。過去にも存在しないし、未来にもそんな人物が現れるわけがありません。
 幸いにして、私どもの工場が加工する老坑硯は、全て正規の老坑を使用しています。正真の石材のみを使用し、紛らわしい商売は決してしません。 只、老坑は数少なく、また、良い石材を大量に仕入れる財力もありません。
 以上三点参考にして下さい。有り難うございます。

図
1999年2月現在
稼働している端渓諸坑図
 老坑に従事する職人が描いた 「端渓諸坑図」です。
 彼らは、日本で≪老坑が採れなくなった≫とのとてつもないデマが蔓延していることを知った当初はこれらに関して全く無頓着でした。
しかし、この≪老坑鉱脈が尽きた≫などのデマを許していたら 「老坑採掘に従事している自分達自身の存在をも否定することにつながる。自分たちがこの世にいないことになる。」と気づいてくれました。

 そして、今までは面倒がっていた老坑採掘に関する資料も積極的に送ってくるようになるなど、彼らの意識に変化が見られるようになり、老坑現場との協力体制はますます整ってきました。
 この図は 脱稿後に届きましたので 取り敢えずここに収録しました。
老坑・坑仔巌坑分析表

 以上で、「老坑端渓にまつわるいろいろ改訂版」を終わります。
 
1999年2月第二稿改定版

書道用品卸みなせ筆本舗  山口 一 記

追加資料へ
「 端渓のまことを伝えたい 」のトップへ