端渓のまことを伝えたい 時の流れとともにその時代時代の端渓を綴りました。
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1999年3月9日の老坑調査行では、新坑口から入ると内部で旧坑と連結、それまでは潜り込める程度の通路=穴=が開いていた部分が掘り広げられ、旧坑そのものに自由に入れるようになっていました。
2ヶ月ほど前の、1998年12月末時点の調査では、老坑の新坑口から坑底近くまで降りると、旧老坑の最深部がのぞき見られる状況になっていたのが、更に坑道を広げ、新坑口の坑底近くから、旧坑最深部へ支障なく出入りできる状態になったのです。
1998年11月の老坑原石盗難事件の影響で、老坑の管理体制を見直しの為採掘を中止していましたが、手持ちぶさたの職人達がこの間に旧坑と自由に出入りできるように、坑を広げてしまったとのことです。
1999年3月9日の調査ご参加の方々は、全員が旧坑に入り坑の状況を調査されました。
現場管理者は、新坑と旧坑最深部との連結部分付近は、石質が(老坑としては)粗いと話し、事実採掘はこの連結部よりもう少し深いところを中心に行なわれています。

老坑の採掘量は、出入りするのにも、原石を搬出するにも、とにかく狭小で不便な旧坑口から、電動モーターで原石を満載したトロッコごと搬出できる、広く便利な新坑口の開設により、旧に倍する採掘量になっていました。
需要は多少の変化はあっても急増することはありません。現地では、老坑のこの過剰生産を原因とする過剰在庫の処理が新たな問題になりかけていました。
1998年11月の老坑原石盗難事件以来、肇慶市人民政府は老坑の管理体制見直しのため採掘を中止していましたが、中止したまま1999年春の増水期に入り、同年前半は結局採掘しませんでした。
1998年10月の減水直後=採掘開始直後=の採掘分はこともあろうに当時の管理者自身による盗難事件で全部持ち去られています。
つまり1998年度後期分は採掘が0だったことになります。
現場では、1999年は2月中旬から5月中旬まで採掘したと言っていますが、3月に老坑調査ご希望の方々をご案内したときは、老坑内へ入坑し、坑底近くまで降りましたが採掘はしていませんでした。
1999年も、例年通り雨期を経た西江は増水し、老坑は平年とほぼ同時期の5月末に水没、秋の渇水期まで閉じられました。
例年なら渇水期に入る10月初旬に採掘は再開されるのですが、1999年9月末の台風による大雨の影響で、12月末になっても水が減らず、1999年12月には19日と27日の2回調査行を実施しましたが、2回とも、老坑の坑口の鍵を解錠してもらって坑内に降りたものの、ホンの15mほどで行く手を水に阻まれました。
ご参加の皆さまは老坑内部に入ったものの、実際に採掘する姿を見られないのですから落胆されるかと思いきや、その水で手を洗ったりしながら、逆に、「老坑まで来た甲斐があった。老坑の水で手を洗った。」などと、明るく元気に真隣の坑仔巌坑に向かわれました。
台風による大水でまだ水か引かないことに加えて、経済発展による肇慶市人民政府の管理部門が分離併合を繰り返し老坑の新たな管理者を決定する事が出来ない状況です。
更に、老坑硯原石の販売が思わしくない(生産増加量を捌くだけの販売量が確保できない=販売量は増えているのだが生産量の増加がそれを上回り在庫が過重になっている)ことも、採掘再開がスムーズにすすまない原因の大きな一つになっています。
今この時期に、老坑管理者に任命されても、営業成績を上げることは難しく将来の出世に悪影響を残す恐れが強いからです。
 
老坑原石は、太古のままの深い眠りにはいるのでしょうか。
地上の社会的な状況が原因となり、ひょっとするとこのまま再開は見合わされるかもしれないと言う恐れも出てきているようです。
中国の過去の例から見ますと再開は数十年後という事態になるかも知れません。
今、老坑の後任管理人に就任しても好成績を残すのが難しいのです。
就任することが躊躇される状況なのです。
管理人が決まらなければ、本格的な再開は延期されます。

そうです・・・
老坑はそこにあるのに、社会的な事情で、ヒョッとすると暫く閉鎖されてしまうかも知れない状態に陥っているのです。
再開の見通しが不明朗な状況下でも、既に採掘した原石の在庫は充分あるわけですから、別に困る事態にはなりません。5年や10年は何の問題も起こらないでしょう。ただ中断が数十年に渡るようなことになると、一時期、老坑の入手は困難になるかも知れません。
1999年10月現在の設備状態では、増水期に中断した後、水が充分減水した状況下で採掘を再開するのには、機械の補修に3日、溜まっている水を排水するのに2週間弱、更にこの実務に入る許可を得るのに7日前後、合計で20日程の準備期間が必要です。
現地の硯工場では、今老坑が閉鎖されても充分な在庫があるので、多分10年(現地では5年分の在庫は充分ある、と言っています。 今までの体験から、“在庫は充分ある”という表現はその2〜3倍の在庫があると読んでも間違いではないと思います)やそこらは原石不足に陥る恐れはないと話しています。
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